センター長の伊藤亜紗先生の研究室OGである西田陽美さんが、未来の人類研究センターの「利他プロジェクト」を受けて、センター居室の901号室に「利他うつわ」をつくってくださいました。はたして「利他うつわ」とはどんな器なのでしょうか。西田さんによるコメントとともにご紹介いたします。

利他的であることを求めてくる器

　未来の人類研究センターでお茶を飲むときに使う器を頼まれたときに、それがどのようなものであるべきかやはり「利他」というキーワードから発想してみたいと考えた。しかし器とはそもそも、それらの上に載せられる料理や液体のためにある利他的な存在である。それだけで机の上に置いたり手渡されたりすることができないモノを支え、依存されるためにある。しかし、全く依存される側だけに始終して何にも依存しない器は、実は利他的とは言えないのではないだろうか。それ自体で自立せずに使う人が支え続ける、あるいはそれに噛み合う付属物に支えられなければならない、そんな出で立ちの器はどうだろうかと発想した。通常は料理や液体といったモノに利他的である器が、利他的であることを他の支持体に求め始めたらこんな不安定な形になるのだろう、というアイデアで作られたのがこの「自立しない器」である。

西田陽美